2008年 03月 21日

南米への旅。(完結)

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ホテルの窓から
見る朝日



 南米から帰ってきた。今こうして日記を書いていると、あれは本
当に有ったことなの? それともただの夢? そんな気持である。
私は傷付くのが嫌なので夢を見るのに用心深い。「大きな期待は持
たない」がモットーなのだ。まず大きな夢を見る。その結果はどう
でも良い。大事なのはそれに向かって踏み出す今の一歩。ハリウッ
ドへの挑戦を始めたころ、私の夢は映画エキストラで大スクリーン
に姿が映る事。簡単な様だが「背景俳優」と呼ばれるこの仕事で確
認出来る程スクリーンに登場するのは難しい。とにかく小さなステ
ップを踏んでいるうち、振り返ると短いけれど道が出来ていた。今
回の事はその道の途中の凄い幸運と言える。

 3月4日、あるオーデションに行った。その内容が面白かったの
は歴史上の革命家のそっくりさんを探すオーデションだった。エー
ジェントからその内容をメールして頂いた。そこには私がオーデシ
ョン参加する革命家の写真が有った。それを見た時「あれ、これ私
じゃないの」と一瞬思った。よく見たら違ったけれど(笑)。
 幸運も幸運、私は知らなかったけれどオーデションの次の日には
キャスティングされていたらしい。プロダクションから電話が来て
身体のサイズを訊かれたのだ。結果を聞いていないのに衣装のサイ
ズを訊く。用心深い私でも期待が膨らむのを押さえ切れない。3日
後エージェントからキャスティングされたと連絡が来た。


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ウルグアイの
通貨ペソ



■3/10/08/月
 そんな訳で南米ウルグアイへコマーシャルの撮影に行く事に成っ
た。その国に付いての知識は、国名を聞いた事が有るなあ程度。ウ
エブで調べたら南米と言うだけあって本当に南(笑)。南半球だあ! 
季節が北米とは反対だよね? などと興奮気味の私である。

 出発は3月10日月曜日午後1時55分。コンピューターで用意
された航空券をロサンゼルス国際空港で搭乗券に変える。初めての
事なので焦りっぱなし。モニターの前で呆然としていたら係の女性
が助けてくれた。「カウンターでする手続きの半分の時間で終りま
すよ」と彼女は言う。慣れたら確かに早いでしょうが、何年か何十
年に一度程の旅行経験では、その進歩に追いつけそうも無い。元々
嫌いな飛行機の旅に不安材料が増える。

 搭乗ゲイトの待合室をきょろきょろ見回す。ロサンゼルスから私
を含め3人がこの便で出発する。それらしい人を探すも、教えられ
ているのは名前だけ。解る筈も無い。
 私達が乗るのはアメリカン・エアーライン。フロリダで乗り継い
で南米ウルグアイへ向かう。座席の狭さに驚くも、フロリダまでは
元気に飛んだ。
 フロリダの乗り継ぎ飛行機の中で男に私の役名で声を掛けられた
(笑)。「似ているから直ぐ解った」と言う。彼、ブルークスはロ
サンゼルスから来た俳優の一人。レーニン役。確かに似ている。そ
して偶然にも私達の直ぐ隣に座っていたサンタクロース髭の男がカ
ール・マークス役の俳優だと知り自己紹介し合う。彼はニューヨー
クから来た。本名はパット。紹介は「私はカール・マークス役のパ
ットです」と役名と本名でやるので面白い。楽しい旅行に成りそう
であった。ロサンゼルスからのもう一人、ケビンは何処に居るのや
ら。


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朝日の当る家


■3/11/08/火
 午前9時20分、ウルグアイの首都モンテビデオに着いた。VIP
扱いで税関を通って出て来ると、私の名前を胸にかざした男が待っ
ていた。初めての経験なのでくすぐったい。バンに乗り少し走って
VIPルームに通される。若いブルークスは大騒ぎ。ビールを飲ん
だりウイスキー飲んだり。この様な扱いに慣れていない私は、借り
てきた猫宜しく静かなものだ。少し遅れてパットとケビンが現れた。
これから我々のホテルまで移動する。

 チェックインまで時間が有る。荷物をホテルのカンターに預け、
早速街を散策に。空気が柔らかくて良い気持ちだ。気温が高いのだ
がそれも気にならない。最初の角で見つけた銀行で現金を両替する。
1ドル=21ペソ。カラフルな札をポケットにねじ込み大通りを歩
いた。何を見ても全然安くなくて、ケビンやパットは悲鳴を上げる。
私は朝食クラブのメンバーに小物を買う積もり。

 チェックインが終わり自分の部屋へ入る。クイーンサイズのベッ
ドが2つ並ぶ大きな部屋。これを一人で使うなんて勿体ない。早く
も貧乏症が出た。

 午後6時、ホテルのロビーでミーティング。このコマーシャルは
ドイツのプロダクションが制作する。ドイツ人の監督とその他のメ
ンバー、出演者はロサンゼルスから3人、ニューヨーク1人、ロン
ドン3人、スペイン1人、現地の人が1人、で合計9人。現地の人
と言うのが、なんとここモンテビデオに住む日本人。ただとしさん。
彼は毛沢東を演じる。ここで日本語を話せるとはうれしい。

 1人で夕食に出た。ウエーターに言葉が通じない。大通りや観光
客が来る辺りは英語も通じる。へそ曲がりの私はそんな場所を避け
て裏通りの小さな店には行ったりするので、容赦なくスペイン語の
洗礼に会う。スパゲティーの注文は成功だったけれど、グラスのワ
インがどうしても解ってもらえなくてボトルが出てきた。トホホ。
でも安いので許す。モンテビデオ最初の夜はまあまあかな。


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早朝の大通り


■3/12/08/水
 衣装合わせとメークアップの日である。とは言え私のコールタイ
ムは午後1時なので、午前中は自由時間。中には朝早くから呼び出
される俳優もいる。朝は海辺を散歩した。ロサンゼルスで親しむ太
平洋ではなく大西洋と言うのがちょっと新鮮。もっとも海は海、違
いが見える訳ではない。赤煉瓦の海辺の歩道を散歩の人達が行き過
ぎる。帰りの道で絵に成りそうな通りの風景をカメラに収める。色
彩豊かな壁やドアが朝の柔らかい光に輝いている。

 12時40分、送迎のバンがホテルへ来る。仮のスタジオと成る
ホテル・デオプラドへ。同乗者はチェ・ゲバラ役のブラジル人。実
はこの役の俳優がビザの関係で到着が送れ、彼は非常時のスタンド
バイ。モンテビデオは大きな街らしく、現場までのドライブは結構
長かった。

 現場に着くと早い時間に来ていた俳優達はすっかり役に成ってい
た。フェデロ・カストロ、レーニン、マーティンルーサーキング・
ジュニア、ガンディー。何とも不思議な世界が広がる。私がこの世
界に魅力を感じる理由の一つはこのメークアップと衣装合わせ。徐
々に他人に成って行くこの感覚。コスプレお宅もこれを楽しんでい
るのだろうなと理解出来る(笑)。

 私のメークアップが始まった。黒い自前の口髭に白い長めの口髭
を被せる。そして長いあご髭。眉を少々太めにして、顔をあちこち
タッチアップ。衣装は白の仕事着みたいな上下。それにサンダルを
履いて出来上がり。こうして私はホーチミンに成った。

 それが終って昼食だ。監督を始め撮影関係の人達、依頼主企業関
係者、そして俳優達。みんな同じテーブルを囲む。一番遅いコール
バックだったカール・マークス、毛沢東、ロサ・ルクセンバーゴ
(この人良く知らないのでカタカナ名も自信無し。唯一の女性出演
者)。食事の後、現地の出演者、毛沢東さん、いえ、ただとしさん
と日本語でお喋り。

 なんと彼は現地でコマーシャルスターとして活躍している。私と
同い年。14歳でペルーへ移民、その後ウルグアイのこの街にやっ
て来た。この商売に入ったのも私の動機に良く似ている。退職後シ
ニアの生活を楽しく過ごす為めだ。しかしこのモンテビデオがコマ
ーシャル撮影のメッカだとは知らなかった。世界のあちこちから撮
影にやって来るのだと言う。ただとしさんはこれまで10本のコマ
ーシャルに出演している。アジア人が特に少ないとの事。「あなた
此処に残ったら、仕事有りますよ」とアシスタントの女性に言われ
た。でも日本食が手に入りにくいので断った(笑)。

 夜は一人で食事に出る。ホテルの近くのカフェテリア。外に沢山
テーブルが並んでいて賑やか。大通りとか観光客が多い場所は英語
も通じる。ラザーニアとビールを注文した。ところがビールは1リ
ットル瓶だけ。それ以下は無し。本当か? しょうがない、飲みた
いので思い切って注文する。大きな瓶がどかんとテーブルに置かれ
たら、足のがたついたテーブルが傾いた。ワインは駄目だったけれ
どこれは飲み干した。良い気持ちに成った頃、パットとケビンがや
って来てお喋り。何となくアメリカ人同士が集まるのも面白い。一
人で食事に出ても、最後はアメリカ人同士何処かで喋っている。ロ
ンドン組はあまり見かけない。文化の違いでしょうか?
 こうしてモンテビデオの2回目の夜は耽る。おやすみなさい。


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ロケ現場
古い屋敷の庭。
鶏やヤギなどが
いた。



■3/13ー14/08/木、金
 コマーシャル撮影は13日、14日の2日間。歴史のありそうな
古い建物で行われた。現在は何に使われているのか中は博物館のよ
うである。門を入ると壊れかけた敷石に1832の数字があるけれ
ど、これはこの豪邸が建築された年なのか。
 撮影は順調に進む。何と言っても楽しいのは昼食時間。付け髭が
少々邪魔だけど、全員が集まって和気あいあいの時間はピクニック
気分だ。撮影はコマーシャルに直接関係の無い画像も撮っていた。
映画のDVDに付いてくるスペシャル・フィーチャー的なものだ。撮
影最終日の最終時間は記念撮影みたいに成っちゃって大騒ぎ。楽し
いのとこれで終わりなんだと言う寂しさが入り混じり複雑な気持に
成る。
 夜は豪華なレストランで打ち上げパーティー。全員が集まると貸
し切り状態である。ドイツ、アメリカ、イギリス、スペイン、ウル
グアイと顔ぶれも国際的。ドイツ語、スペイン語、英語、日本語、
が飛び交う。ここまで書いて気が付いた事が、そのパーティーにた
だとしさんが来ていなかった。その事に今気が着く私。従って日本
語は飛び交っていなかった(笑)。肉は殆ど食べない私だがステー
キに挑戦。これが最高だった。肉が好きに成りそうである。Not!.
ホテルに帰ったのは午後零時だった。念入りにシャワーを取り(付
け髭の接着剤で自前の髭がばりばりに成っているので洗うのが大変
。)幸せな気分でベッドに入る。明日は1日自由時間だ。カストロ
役のスタンレーだけが短い撮影が有るようだ。ご苦労さん。


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ホテルの
窓から
見る夕焼け。



■3/15/08/土
 朝食がホテル料金に含まれているのだと知らなくて、高そうなホ
テルの食事を避けていた。撮影初日に俳優仲間にその事を聞いた。
次の朝からもちろんホテルで朝食。コンチネンタルな食事は私の朝
にちょうど良い。明るいホテルの食堂はとても良い気持。旅行者の
気分を味わえた。そんな訳で今日の1日もこの朝食からスタートす
る。朝食後海辺の散歩に出掛けた。ホテルから歩いて10分程。ロ
サンゼルスの喧騒に成れている私には、途中の道は静かで夢見心地
で歩ける。

 小さな通りを赤信号で横切った時(この街の人達は赤でも車が居
ないと道を渡るので、その真似をした)横合いからネイティブな英
語で声を掛けられた。英語の話せるウルグアイ人か。振り向くとサ
ンタクロース髭のパットだった。その辺は殆ど人も歩いて居ないの
で、突然のアメリカ人出現に驚く。そのまま2人で海岸まで散歩。
釣り人が糸をたれている側を散歩の人が通り過ぎる。長閑な土曜日
の朝だ。

 午後は買い物。朝食会メンバーに小さなお土産を買わなくちゃ。
ジョンには催促されたし(笑)。観光客の行く所はボラれるので止
めようと思っていたけれど、英語も通じて便利なので結局その辺り
を彷徨う。

 帰りの飛行機は今夜9時20分。時間はたっぷり有ると余裕でい
たら、アシスタントのエヴェリンから「空港へは出来るだけ早く行
った方が良い」とのメッセージが入る。週末は混んでいるので席が
取れない可能性がある。そんな恐ろしい事を言われる。ダブルブッ
キングと言うやつだ。これから送りのバンを回すと言う事でアメリ
カ組は行きなり大忙し。

 空港ではアメリカ人4人のうちブルークスと私は空席待ちに回さ
れた。本当はそんな事も知らずにパットとコーヒを飲んでいた。
「サムの座席番号は何番?」と訊かれてチケットを取り出したら座
席番号が書かれてない。カウンターでチェックインした時書き忘れ
た? 思い込みの激しい私はパニック状態。アメリカへ帰れなかっ
たら私はホテルを追い出されホームレスに成る。モンテビデオで唯
一の日本人ホームレスは珍しくて、行き交う人がどんどん金を恵ん
でくれるので、私は世界一の金持ちホームレスと成る。しかし、そ
んなの嫌だ。今まで通り貧乏アメリカ人で良い。

 とは言え、今こうして自分のマックの前で日記を書いている。座
席はちゃんと頂いたのであった。かの有名な哲学者サムの言葉「ど
うにもなら物事は無い、どんな困難も結局はどうにか成る」とても
立派な様なバカバカしい様な深い言葉ではないか。Not!。

 私の人生最大イベントはこうして幕を閉じた。
ご清読ありがとうございました。 


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巨大1リットル
ビール瓶。



               FIN
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by shinia62 | 2008-03-21 09:19 | はりうっど、ハリウッド | Comments(16)
Commented by karue024 at 2008-03-17 16:01
なんだかすごいことが起きたようですね~!
続きが楽しみでわくわくします。
それにしてもいい事だったようなので本当にほっとしました(^。^)
Commented by かず at 2008-03-17 16:06 x
南米ですか!きっとイラクかパキスタンか中東、ソビエト辺りの危険な地に足を踏み入れられるのだろうなぁと予想してましたが・・・・・いずれにしても無事で良かったです。それにしても写真の影響だと思いますが、エキストラに選ばれるなんてラッキー(?)ですねぇ。叉、絵のご指導いただける事大変うれしく思います!
Commented by genova1991 at 2008-03-17 18:13
わ~い!最初にあげたブラジルも南米のうちですものね^^
大当たりぃ~!!!(笑
続きが楽しみです。ワクワク^^v
Commented by shinia62 at 2008-03-18 00:00
karueさん
本当に良い事で私もホッとしています(笑)。日記は私の初南米旅行記としてご報告致しましょう。
Commented by shinia62 at 2008-03-18 00:04
かずさん
それらの危険地位区なら行くのを拒否したかも。いや、仕事なので命を掛けて行った事でしょう。今回の旅行はコマーシャル撮影でした。絵の方もこれからどんどんブログに乗せます。お楽しみに。
Commented by shinia62 at 2008-03-18 00:09
genovaさん
そう、最初に当たりです。勘の鋭さに恐れ入ります。ブラジルの南隣の国でした。詳しい事は日記に書きます。
Commented by karue024 at 2008-03-20 00:59
この方がサムさんのそっくりさんですか?
両方同じ方ですか?
上の方、三国錬太郎さんに似てませんか?
ということはサムさんは三国さんにそっくり??^^;
Commented by koji06123 at 2008-03-20 05:13
楽しそうな事で何よりです。
続きも楽しみにしております^^
Commented by lanova at 2008-03-20 05:24
いやあ、めでたい話で本当に良かった!さむさんが演じた有名人はどなただったんでしょ?そのドイツのCMこっちでも見たいものです。YouTubeで流れないかなあ。
Commented by shinia62 at 2008-03-20 06:44
karueさん
まさかあ、、、、。これウルグアイの通貨です。上の肖像は確かに目付きが三国連太郎ですね。私はどちらかと言えば三船敏郎です。ってな事はなく典型的なアジア顔でございます。ご安心ください。
Commented by shinia62 at 2008-03-20 06:53
lanovaさん
私が似ている革命家は、、、、Xfileされていて発表の段階ではありません。信頼ある情報機関によりますと(笑)、このCMの監督Markus Walterのホームページで、近い将来この映像を視る事が出来るとか聞いてます。詳細が解りましたらブログで発表します。
Commented by shinia62 at 2008-03-20 06:54
kojiさん
続きをお楽しみに。
Commented by mame-neko3 at 2008-03-22 00:13
いやぁ~すごいですねぇ
そうだったんですか
サムさんが楽しそうでなによりです^^
出来上がったものが観られるといいのですが。。。
Commented by shinia62 at 2008-03-22 00:38
mame-nekoさん
ドイツだけで流れるコマーシャルとか聞いています。それで評判が良かったらヨーロッパ。もっと良かったらアメリカ。噂によるとコマーシャルのアカデミーと言うか賞を狙っているとか。確かに力の入れ方が違いました。どれも噂ですが。
Commented by kimiko at 2008-03-23 17:20 x
とっても新鮮でイッキに読みました。
続きが楽しみです♪
Commented by shinia62 at 2008-03-23 22:06
kimikoさん
私の人生にとってとても良い経験をさせて貰いました。旅費やホテルの心配もなく夢の様です。商社マンもこんななんだろうかと思ったりしました。


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