ちょっとシニアチック Watercolor by Osamu 水彩画家のロス日記 Watercolorist Diary

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2006年 03月 10日

学生映画に出演

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 昨夜遅く電話が成った。1時間程チャットで遊んでインターネッ
トを切った直後だった。午後10時を少し回った頃だ。電話の主が
言った。
「ジョーと言いますが、学生映画に出演して頂けないでしょうか。
実はナウ・キャスティングHPでプロファイルを見て電話していま
す」

 昨年の暮れに知人のDに勧められて、無料のプロファイルをその
HPに載せた。映画エキストラの部門が無いので俳優として。そん
なのを見ている人が居るとも思えないし、遊び心からだ。Dは月幾
らか払って本格的に登録している。

「ええ、興味ありますね」
 と私。
「それで撮影は何時なんですか」
「明日午前七時がコールタイムです」
 金曜日に特に用事はない。学生の卒業作品だと言う。学生作品へ
の出演は出演料は無いのが普通だ。俳優の卵が履歴を作るため、無
料で出るのだ。私は俳優に成るつもりは無いので必要ないのだが、
一度経験するのも良い。
「時間が有りますのでやりたいですね」
 そう答えた。現場の地図などを含めた詳細をメールで送ってもら
う。撮影はスタジオシティーの通りである。

 朝5時に起きた。雨が降っている。外での撮影に雨は困る。ラジ
オを聴くと、雨は朝方だけらしい。約束したのでとにかく行くしか
ない。現場に20分前に着いた。ヘッドライトを点けたままの白い
バンが通りに停まっている。映画の関係者らしい。結構激しい雨な
ので車の中で時間まで待った。
 そのうち全員が集まったが雨は止む気配もない。撮影をするのか
しないのか。携帯電話で連絡を取り合う。結局降ったり止んだりの
雨の中撮影が決行された。

 私が出演するのはセットカムコメディーのパイロット(作品を売
り込む為に作るサンプル)だ。勿論本物ではなく学生の卒業作品。
ハリウッド通りのある有名劇場で作品発表会が開かれるのだそうだ。
タイトルは「Hardly Working」。何をやっても続かない白人の
若者。電話帳配達のアルバイトをする。そのボスが中国人のシニア、
ミスター・ヤン、私の役。シーンは配達用のバンの中。
 こんな感じだ。

 台本はその日の朝に渡された。少ない台詞ではあるが素人の私が
即覚えて自然に演技が出来るだろうか。第一俳優としてここに居る
のが既に嘘っぽい。面白い経験がしたいからなどと言うのも無責任。
さてどんな結末に成るのだろうか。

 一回目のリハーサルが始まった。そして私は一気に打ちのめされ
る。相手役に合わせて台詞が出ない。無理も無いのだ。私は自分の
台詞だけ覚えて全体を把握していない。台詞は相手役のを含めて全
部把握しなければタイミングが掴めないのだ。

 監督がやって来た。躊躇している。監督と言っても学生で、その
場をどう処理するのか迷っている様だ。特に私の素人丸出しに。監
督は私と目を合わすのを避けていた(笑)。あまりの酷さに言葉を
失った、そんな様子である。監督は私には全く何も言わず、主演の
白人にいろいろ注文を付ける。プロの俳優らしく、演技は抜群に上
手かった。一方私は何を言われるのかと、一種の期待で彼の言葉を
待つ。

 ようやく監督が私を見た。しかし何も言わない。そこに有った台
本を手に取ると、私の台詞が載るページを本体から外した。その上
部にテープを張るとこちらに渡し
「これをハンドルに張れば大丈夫」
 と宣言した。因にこのシーンで私は車を運転しているのだ。カン
ニングしろと言う訳だ。たった一度のリハーサルでこの結論はショ
ック。その後の監督の皮肉っぽい冗談が、呆然とする私の耳に遠く
聞こえた。
「マーロン・ブランドも台詞が覚えられなくてメモを使っていたん
だ。それと同等のあんたは凄いじゃない」

 私は不器用だ。回りに追いつく為に他人の倍頑張る。即興で何か
が出来る人ではない。練習に練習を重ね人並みに成る。
 ガクンと落ち込む。その後は地獄だった。一度カンニングをする
とメモから離れられなく成る。それに気を取られると相手役の台詞
が聞こえない。演技は相手に反応してするものだ。

 カンニングしろと言われた事は、能無しと言われたも同然。そう
思ったら自分に対して怒りが込み上げた。休憩中にそのシーンの台
詞を必死で覚えた。勿論相手役の分も。出演者のクローズアップを
撮影する辺りで、ようやく台本から離れられた。私のクローズアッ
プは最後だったので、どうにか総てを撮り終えた。

 凄く寒い日で、一時は雨が氷に変わった。撮影クルーの学生に日
本人が一人居た。その彼とのお喋りは楽しかった。昼食は私だけ寿
司を注文してくれた。しかし、思い出すのは辛い出来事ばかり。出
演料の無いこの仕事が、一番辛く一番勉強に成った。「いろんな経
験がしたくて映画のエキストラをしています」と軽口を叩いていた
自分が恥ずかしかった。やる以上納得出来る仕事でなければならな
い。私の中の職人気質がそう叫ぶ。

 この苦い経験から、今は英語の台詞のコールド・リーディング
(台本を即座に覚え演技する)を訓練してみようかと真剣に考えて
いる。
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by shinia62 | 2006-03-10 15:20 | はりうっど、ハリウッド | Comments(5)
Commented by agapi at 2006-03-13 04:22
私も何をやっても不器用なので、人よりいろいろと努力をしなくてはならないので疲れます。世の中の人の器用さがまぶしく見えて嫌になる事もありますが、そういふうに私が出来ているのだからしょうがないとあきらめました。マーロン・ブランドも不器用だったんですね。
Commented by ladyinnj at 2006-03-13 05:58 x
さむさんはいつも好奇心旺盛で素晴らしいと思います。新しいことにチャレンジしようという気持ちもおありですし。
私も不器用で努力の人でしたが、最近はそれも怠りがち。人生楽しく暮らせたらいいと思うようになりました。それがいいことかどうかはわかりませんが。
Commented by shinia62 at 2006-03-13 10:36
agapiさん

でも本当の職人は不器用な人が多いと言ますね。
時間を掛けて身体で覚えた事が物に成る。
今日貧乏とも言いますし。
Commented by shinia62 at 2006-03-13 10:37
器用貧乏でした。↑
Commented by shinia62 at 2006-03-13 10:40
ladyinnjさん

私も人生楽しく過したいです。
其の為に好奇心旺盛に、努力も楽しみにしちゃうとか。
シニアは楽をするの危険です。
気が緩んだとき、老いが追い上げてきます。(笑)


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