ちょっとシニアチック Watercolor by Osamu 水彩画家のロス日記 Watercolorist Diary

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2005年 12月 07日

オルゴール

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 入り口の大きな門を入ると、直ぐ左に池が有った。
そこには2羽の白鳥が浮かんでいる。
良く手入れされた芝生の緑が眩しい。
まるで絵の様な風景が広がる。
右手にオフイスと花屋が有る。
このフォーレストローン墓地の丘の上に、
B氏が眠るモザリアムは有った。
そして今日が彼の3回目の命日であった。

 荘厳な入り口のドアを押すと薄暗い廊下が続く。
迷路の様に入り組んだ廊下の壁には、死者の名前が刻まれ、
花を生ける為の花瓶が、金属のアームの中に収まっている。
ひんやりとした空気を頬に感じながら、私は奥へ進んだ。
ステンドグラスを通して入り込んだ光が、
床に色とりどりの模様を描いていた。
どこからか微かに癒し系の音楽が流れる。
外からは想像も出来ない別の世界がそこに有るのだった。

 B氏の墓へ花を供え、
少し物思いに耽っただけで、私は外へ出た。

「どちらかが先に死んだら、あの世からサインを送ろうね」
 B氏が元気だった頃、
私達は良くそんな冗談を言って笑った。
しかし、彼が死んで暫くは、
私はあの頃のたわいのない話しを信じたい気持ちで一杯だった。
勿論そんな事が起こる訳も無い。

 その夜私は夢を見た。
何処かの公園だった。
何と言う花なのか、鮮やかな黄色が地面を覆っていた。
その中に有るベンチに腰を下ろすと、
何処からかオルゴールの音が聞こえた。

 暗い部屋でふと目が覚める。夢だったのだ。
枕元の緑のデジタル文字が、午前3時を示していた。
夢から覚めたがオルゴールの音はまだ聞こえていた。
寝ぼけた頭の中でアイスクリームのおじさんかと、
あり得ない事を思った。

 その音は直ぐ近くだった。家の中で鳴っている。
眠気が吹き飛んで、ベッドから起き上がった。
何処で鳴っているのか、突き止めなくては成らない。

 居間からだ。 
B氏の遺品の一部が仕事場のテーブルの下に有る。
音はそこからだった。
沢山有る段ボール箱に耳を近づける。
確かにその1つからオルゴールの音がした。
 
 箱を開ける。
ブルースの好きだったおもちゃが沢山入っていた。
その中の1つが聞き覚えの有るメロディーを奏でていた。
ダンシング・クラウンとタイトルの付いた小さなオルゴールだ。
切り抜きのピエロが音楽に合わせて踊っていた。

 箱はこの3年間一度も開けた事は無かった。
その中の1つが行き成り鳴り始めるなんて、
不思議な事も有る物だ。

 オルゴールはピエロの下に有る引き出しを開けると、
鳴り出す仕組みだった。
何らかの振動で引き出しが1人で開いたのだろうか。
それを取り出してテーブルの上へ置いた。
懐かしい思い出が蘇る。

 半分引き出された小さな引き出しに、白い紙切れが見えた。
取り出してみると、B氏の手跡でこう書かれていた。

「ハーバーヴィレッジで9月、2002年。サムと一緒に」

 ベッドに戻ったが,寝付かれなかった。
あれはB氏からのメッセージなのか。

(完)


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by shinia62 | 2005-12-07 14:33 | Comments(4)
Commented by Ladyinnj at 2005-12-07 22:51 x
ブルースさんが、さむさんにお別れを言いに来たんじゃないでしょうか。
もう一人でも大丈夫だと思って、天国に帰っていったんだと思います。
私もずいぶん前に同じような経験をしました。
そのときは義母が息子(孫)にお別れを言いにきたんです。彼の誕生日の夜中、急に蛍光灯がつきました。それまでおばあちゃんがいるとその部屋に行くのを怖がっていた息子が、その日以来大丈夫になったんですよ。私たちがアメリカから帰って、義母も安心したんだと思います。
Commented by shinia62 at 2005-12-08 01:04
過去の出来事を思い直してみると、
もしかしてと思える出来事が結構有るものですね。
私はこの手の話しには疑い深い方ですが、
そう思う事で心が癒されるなら、とってもいい事だと感じます。
Commented by peartree812e at 2007-05-03 21:42
B氏は約束を果たされたんですね^^

はじめまして。
偶然通りがかり初めて開いたページのピエロのオルゴールは私も同じものを持っていたのでちょっと気になって記事を読みました。

とても不思議だけど、心が温まりました。    
Commented by shinia62 at 2007-05-04 01:59
peartree812eさん
初めまして。コメントありがとうございます。そのお陰で自分の古い日記を読む事に成り感動してしまいました。(笑)


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