2005年 11月 23日

タマ

c0053177_9593023.jpg  私の名前はタマ。この家の主人が付けてくれた。この家へ来てもう12年に成る。その前は野良猫家族の一員で、主人の友人の裏庭に暮らしていた。生まれて数ヶ月後、その友人が家を売りメキシコへ移住する事に成り、私はこの家へ貰われて来た。他に兄弟が4匹居たが、主人は私を選んだ。その理由が、他の子猫は虎猫だったのに私だけが真っ白に黒のスポット、そのデザインが気に入ったのだとか。絵描きの主人らしい話しだ。猫の運命はまったく分からないものだ。一番人見知りする私が気に入られたのだから。他の兄弟達がその後どうなったのか、私にはまったく分からない。

 主人にはどうやら慣れたものの、郵便配達人や客が来る度ベッドの下へ逃げ込んでいた。主人の他に私の姿を見たものは居ないのではないだろうか。身を低くして逃げる姿が可笑しいと、主人は笑ったものだ。

 猫の12歳は結構な歳。最近スクリーンドアから外を覗いている事が多い。主人はその姿が可愛いと写真に撮ったりスケッチしたりしている。この12年間に絵のモデルは数えきれない程やった。
 実は、私がどうして外を眺めているのか主人は知らないのだ。動物的感と言うものなのか、分かるのだ。もうすぐあの青い空に向かって飛び立つ日が来るのを。

 9月のある日、その日が来た事を知った。ドアの外には抜ける様な青空が広がる。その真ん中に1つだけふんわりと小さな雲が浮かんでいた。それをじっと見ていると、私の身体が白い光に包まれた。言葉では言い尽くせない幸せな気持ちが身体に溢れる。老いた身体に感じる疲れや痛みもすっと消えた。そして、私はドアの前から9月の陽光の中を静かに登り始めた。
 ふと下を見ると、主人がドアの前に立っている。私は心の中で叫んだ
「ご主人様長い間ありがとうございました」
 それが聞こえたとでも言う様に、主人は真っ白な小さな雲を見上げていた。
「さようなら」
 白い光にやさしく包まれ、私は登り続けた。

 (完)

( ladyinnjさんのこの絵に対するコメントから、こんな話しを書いてみました。)
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by shinia62 | 2005-11-23 10:03 | Comments(6)
Commented by ladyinnj at 2005-11-23 22:44 x
とってもいいお話ですね。以前に飼われていた猫ちゃんの思い出でを元にしたものでしょうか。ジワ~~ッと涙がにじんでしまいました。
Commented by shinia62 at 2005-11-24 01:19 x
この絵が私の猫タマで、その思い出に創作プラスです。
今頃は" Cat's heaven " で幸せでしょう。 (笑)
Commented by lanova at 2005-11-24 11:02
NOVAです。目頭が熱くなってしまいました。私、今年の2月にブログを始めたんですが、そのころたびたびこちらにお邪魔していたのを思い出しました。優しいタッチのさむさんの絵に見とれてたんですよ。ということでこれからもよろしくお願いします。
Commented by shinia62 at 2005-11-24 12:17
NOVAさん、いらっしゃいませ。
ブログは何時もチェックしてます。
ローカルの記事が多いので楽しく読んでいます。
こちらこそよろしくお願い致します。
Commented by はにはにの母 at 2010-12-21 02:58 x
泣けます。
Commented by shinia62 at 2010-12-21 05:45
はにはにさん
自分の日記を読んで私も泣けました。


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