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2011年 03月 31日

看板職人時代 15

看板職人時代 15_c0053177_1254387.jpg


 4月中旬のその日は薄曇りで肌寒い日であった。午後4時、米国
客船アメリカン・プレジデントライン「クリーブランド号」は静か
に岸壁を離れた。色とりどりのテープが風になびく中、人々の別れ
の声が響く。見送り人のいない私は冷めていて、何だこんなもんか
とうそぶく。しかし、自分でも半信半疑だったアメリカ旅行が今現
実に始まっているのだと思うと、興奮が身体の奥からじわじわと突
き上げてくる。

 私の部屋は船底の4人部屋。部屋の両側にバンクベッドが二つず
つ。洗面台が有るだけの質素な部屋だ。トイレやシャワーは共同の
が外にある。この部屋で一緒に旅をする客は、同年輩の若者二人と
私の三人。つまりベッドが一つ空いている。そこが私達の物置と成
る。私のベッドはドアを入ると右側の下段。神奈川県出身だと言う
Mは左下段。一番若そうな東京出身のTは右側上段と決まった。

 部屋の中を見回し私が一番驚いたこと、それはアメリカのタオル
は厚くてごつい。何しろ北海道では風呂に入るのも手ぬぐい一本。
バスタオルなどとしゃれたものはなかった。早くも私はカルチャー
ショック。

 当時の私の英語はかなり怪しいものであったと思う。しかし日本
で一応英会話を習っていた訳で、我々の部屋では英語に強いと言う
ことに成った。他の二人はアメリカへ短期語学留学するのだとか。
二人とも良い人そうだし、これからの二週間の船旅が楽しいものに
成りそうであった。

16に続く

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by shinia62 | 2011-03-31 12:55 | 過去日記(◯◯◯◯年 ) | Trackback | Comments(0)


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